「甲賀まるっとラジオ」始動のきっかけとなったメンバー
みなさんは、甲賀地域に特化したインターネットラジオがあるのをご存じですか?
地域情報を発信し、極めてローカルな話題で住民の支持を得ているインターネットラジオ局「甲賀まるっとラジオ」。
小さな集落のお祭りから子ども向け大規模フェスタまで、ありとあらゆるイベントを甲賀市内外へ届けている地域団体です。
今日は、その「甲賀まるっとラジオ」を代表して、機材のセッティングや編集作業を担当している山本尚路さんに”地元への愛”について伺いました。
(本文、敬称略)
きっかけは「おうみ未来塾」
──本日はよろしくお願いします。
山本 お願いします。
──では、まず山本さんの経歴から伺えますか。
山本 元々は甲南で生まれ育ったんですけど、就職で一度大阪の淀川区というところで暮らして、そのあとこの甲南に戻ってきました。
──大阪の淀川区といえばめちゃめちゃ都会ですよね。新大阪駅の近くで。
山本 はい、ビルばかりでしたね。(笑)
──で、こちらに戻ってこられたと。やはりご家業(造園業)ですか?
山本 はい。父親が代表で、僕(27歳)と弟(24歳)も一緒に働いてます。弟の方が修業期間もあるのでそちら(造園業)は詳しいんですけどね。
──そんな山本さんがなぜ『甲賀まるっとラジオ』を始めることになったんですか?
山本 きっかけは”おうみ未来塾”という地域プロデューサーを育成する塾に入塾したことなんです。
──おうみ未来塾?
山本 地域の課題に取り組み、それを解消するために事業や運動を起こすことができる人を育成するというか。おうみ未来塾では『地域プロデューサー』という言い方をしてるんですが、その地域プロデューサーを育てるために2年間いろいろと教えてくださるんです。
──ははあ、なるほど。
山本 甲賀市は若い子育て世代が水口や甲南を中心に増えてますけど、一方で少し奥まったところに入ると、過疎や高齢化社会と嫌でも向き合うことになります。そんな地域の課題を解決できるお手伝いが出来たら、とおうみ未来塾に入りました。
──そして地域の課題を洗い出していったと。
山本。そうですね。(冊子を取り出して)これはおうみ未来塾の卒塾報告書なんですが、僕たちのグループ『甲賀☆ムラづくりLABO』でこうしたほうがいんじゃないか、など何度も議論を重ねて出したテーマが、甲南町の”いそお活性化計画”と”循環型農業プロジェクト”でした。
──本当にローカルな課題を選ばれたんですね。
山本 地域ごとに課題はいろいろあると思うんですが、高齢化はほぼすべての地域で当てはまる問題だと感じました。それに付随して、休耕田の活用や循環型農業サイクルの維持など、地元の農業を支えるにはどうすればいいかを考えるというテーマを選びました。
──ローカルですが言い換えれば身近な課題ですよね。
山本 そうですね。ただ、それらの課題に取り組んでもそれを発信する術(すべ)がない。SNSでもいいんですが、よりたくさんの人に知ってもらうにはどうすればいいか? となったときに思いついたのが自分たちで発信する媒体を持つことです。SNSはやってない、でもスマホやインターネットならあるよ、という方も多いので「じゃ、YouTubeを使ってインターネットラジオみたいなのはどうかな?」と考えました。
──つまり、主な課題ふたつの発信方法として『甲賀まるっとラジオ』を考えたと。
山本 綺麗にまとめるとそうなりますが、当時はそこまで深く考えられていなかったですし、もっと軽い感じで甲賀まるっとラジオは始動しましたね。(笑) それこそ、水口の居酒屋でおうみ未来塾のメンバーと飲んだ時に「やってみよう!」という感じで決まりました。とにかく、地域の細かい情報を発信したいという思いだけです。(笑) その場に、ラジオ局でパーソナリティをしているメンバーもいて、その方には今でもずっと甲賀まるっとラジオのサポートをいただいていますね。
なぜ「ラジオ」?
──ところでずっと気になってたんですが、なんで”ラジオ”なんですか? YouTubeを使われるのであれば”動画”のほうが一般的だと思うのですが……
山本 これはこだわりみたいなもので、ラジオの身近な感じが好きなんですよ。(笑) 動画ならずっと観てないといけませんけど、ラジオなら何か用事をしながらでも聞いてもらえますから。
──なるほど。
山本 編集面でもそうですね。動画ならしっかり編集すると結構時間がかかりますが、音声だけであるなら、編集作業も短縮できて気楽に発信できます。
──とはいえ、ラジオと銘打ちながら動画もしっかり載せてらっしゃることもありますね。
山本 イベントへの取材を依頼されたときなどはそうですね。現場の雰囲気が伝わりやすいので。普段は音声だけとか、動画といっても固定カメラでの撮影とか。
──音声だけだと本当にラジオっぽいですよね。
山本 メンバーみんながラジオが好きですからね。地域の情報を発信することも大事ですが、活動を続けることも同じくらい大事だと思っています。なので、発信の手段も様々で、例えばメンバーが「今日は顔出しはちょっと…」と思うときは無理に出てもらわないようにしたりもします。活動は仕事ではないし、あくまでも地域活動です。それぞれが自分の役割を考え、地域に貢献することが重要ですからね。無理な時は、違う形でサポートしてもらっています。
いろんな世代の意見が出るのは強み
──ちなみに、みなさんの年代は? やはり若い方が多いのですか?
山本 どちらかというともう少し上の世代が多いです。だからちょうど僕らと高齢者の方の橋渡し的な立場ですね。それがいい方向に機能していて、「若い連中だけじゃなあ」みたいなうっすらした”任せられない感”を他のメンバーが人生経験であったり交渉力であったりで補ってくれていると感じます。僕らだけではなかなか進めるのが難しいこともあるので。
──役割分担というか。
山本 そうですね。いろんな世代の意見が聞けるのはうちの強みかなと思います。ちなみにうちは、代表とかはないんですよ。(笑)
──えっ? そうなんですか?
山本 今回のインタビューは僕が”メンバーの代表”とはなってますが、団体の代表とかではないです。僕たちは、物事は基本的にみんなで相談して決めてるんです。合議牲というやつですね。なので、今回のインタビューも「誰がいく?」から始まり、結果、僕が担当しているんですけどね。
──やはり取材依頼は多いですか?
山本 おかげさまで、地域のイベントとかがあったら「取材に来てよ」と声をかけていただく機会も増えました。メンバーも地域ではいろんな顔を持っているので、その伝手での取材が多いのです。最近は、新型コロナでイベント自体が中止になることも多いですが、お声がけいただけるのは本当にありがたいですね。
──これまで発信してきた成果ですね。
山本 そうであれば嬉しいですね。報われている感じで。(笑)
これからの『甲賀まるっとラジオ』
──これからの『甲賀まるっとラジオ』はどうなっていくんでしょう。
山本 今のスタンスのまま、ゆる~く続けられたらいいかな、と思ってます。(笑)
──あまり急ぎすぎないというか。
山本 そうですね。やっぱり地域の情報って固定ではないし、その時々で常に変わっていると思っています。去年取材したイベントも、今年取材するとまた違ったように見えたりもします。毎年毎年変わるから、僕たちもその変化についていかないといけないと思うんです。そういう意味では”終わりのないマラソン”みたいなものですから、「取り組みを続ける」ことが一番大切になってきますね。だから、「ゆる〜く」は、ダラダラしているのではなく、継続するためには大事なことなんです。
──確かに”継続は力なり”ともいいます。
山本 無理せず、常に地域の情報と向き合う準備をしていく。それが我々のやっていくことだと思います。
──地域の身近な情報は常にそこにある。それを解決していくために『甲賀まるっとラジオ』で発信していく、と。
山本 我々にはそういう役割があるんじゃないかと考えています。『甲賀まるっとラジオ』を地域のみなさまとともに創り上げていく、っていう感覚ですね。地域の困りごとや発信してほしい情報をひとつずつ取り上げていくことで、少しでも地域のお役に立てれば嬉しいですね。
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