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#01

「演劇集団 deer deep」

主宰:中島和彦さん

演出・脚本:竹山香さん

インタビューに答えてくださった中島さん(左)と竹山さん(右)

中島さんは『甲賀市から演劇で滋賀県を元気に!』を標榜し、演劇集団 deer deepを結成。

年1回の定期公演を中心に、動画配信などアクティブに活動されています。

甲賀市を愛し、演劇を愛する主宰の中島さんと脚本家の竹山さんにお話を伺いました。

(本文、敬称略)

結成のきっかけは「mixi」?

──本日はよろしくお願いします。

 

中島 よろしくお願いします。

 

竹山 よろしくお願いします。

 

──まずは「演劇集団 deer deep」結成当時のお話から聞かせてください。

 

中島 私が滋賀県を拠点に芝居をやりたいな、と思ったのが最初でした。で、何とか人を集めようと思いついたのがSNSでした。

 

──SNSで個別に声をかけられたんですか?

 

中島 そうです。mixi(*1)を使っていきなりダイレクトメッセージで「お芝居に興味ありませんか?」って。

 

竹山 ストーカーまがいですよ、本当に。(笑)

 

中島 あなたもそれで来たんでしょ。

 

──えっ? 竹山さんは元からのお知り合いじゃなかったんですか?

 

竹山 いえ、私もストーカー被害者です。(笑)

 

中島 言い方悪いなぁ。もちろん元からの知り合いもいましたけど、竹山はmixi組です。とにかく「滋賀県 芝居」で検索して片っ端から声かけていきました。

 

──片っ端から。(笑) ある意味、破天荒ですね。

 

中島 それくらい芝居をやりたいっていう気持ちが強かったんでしょうね。そこで集まったメンバーが総勢8人。それがいわゆる”旗揚げメンバー”です。その流れではじめてメンバー全員が顔を合わせたのが2012年11月10日。それが「演劇集団 deer deep」の設立記念日ですね。

 

──なるほど。では、そこからの活動について教えていただけますか。

 

中島 メンバーは集まったんですが、さあそこからどうしようかな、と。一回こっきりで終わらせるか、それとも劇団として定期的にやっていくのか……悩みどころではあったのですが、やがてそれどころじゃない事態になってしまって。

 

緊急事態!はじめてのつまづき

──それどころじゃない事態?

 

中島 芝居に対する熱が高すぎるあまり、指導に力が入りすぎてしまった。楽しくお芝居がやりたいメンバーからすれば「何かちょっと違うな」という違和感があったのか、自然と劇団から足が遠のいていきました。私がちょっと厳しくしすぎた部分があったのかも、と反省しています。


竹山 お客さんからお金と時間をいただいてお芝居を見せるんですから当然といえば当然なんですが、当時はやはり熱量の差というのが原因としてあったんじゃないですかね。

 

中島 私自身がそういう世界で生きてきたので、芝居に対する意識の違いという部分にまで気持ちが行き届かなかったんです。

 

竹山 deer deepとして一番苦しい時期だったかもしれません。

 

中島 それが原因というわけではないですが、deer deepはいったん活動を休止してるんです。

 

──活動休止期間があったんですか?

 

中島 ええ、5年から6年くらいですかね。

 

──思いのほか長いですね。

 

竹山 その間は公演もできないので、よそからオファーで台本を執筆したり、他劇団へのゲスト出演やスタッフ協力、イベントの司会などをして、メンバー各々が細々と活動していました。

 

中島 芝居への情熱が失われたわけではなかったので、いつかきっと……という思いは常に持ち続けていましたね。

 

──心は折れなかったんですね。

 

中島 SNSで集まってくれた仲間たちもいましたからね。そして活動を再開したのが2017年夏です。

 

竹山 この年に、やっと初公演を開催することができたんですよ。

──第一回プロデュース公演「君の夢の中で逢おう」ですね。

 

中島 実は甲賀市には手頃な小屋(=劇場)がなくて。会場として使った碧水ホールは336席もあるので、埋まるかどうか心配していましたが、まあ何とか格好はつきました。(笑)

 

竹山 ファンタジックなお話ですが、おかげさまで観劇後アンケートでは「とてもよかった」と嬉しいお声をたくさんいただきました。

 

中島 この作品がひとつの転機になりましたね。「ああ、このまま進んでいいんだ」という自信になりました。

──それからは順調に活動を継続してこられたんですか。

 

中島 「りっとう演劇祭」への参加や地元でのワークショップ、スタッフ協力、他劇団への客演などを中心に少しずつ力をつけていきました。

 

竹山 2019年には第二回公演として「いつか、きっと、空の下で」を開催できました。

 

中島 不妊治療をテーマにした少し真面目なお芝居ですが、それもまた団員にとっていい経験になったと思います。

甲賀市にこだわる理由

──演劇集団 deer deepさんのスローガンに「甲賀市から演劇で滋賀県を盛り上げる」とあります。甲賀市にこだわる理由は何ですか?

 

中島 それは、単純に地元が好きだからというのもありますが、「甲賀市でもお芝居ができる場所、観ることができる場所がありますよ」ということを発信していきたいんです。たとえば買い物なんかでもそうですが、ちょっとお洒落な服が欲しかったら地元じゃなくて京都や大阪へ行ってしまう、みたいな。芝居も同じで、ちょっと興味を持って調べてみたら大阪や京都まで行かないとだめだと。「じゃあ諦めよう」となってしまうのが勿体ないなと思ったんですね。地元に劇団があってお芝居に触れる環境があればわざわざ京都や大阪まで出ていかなくてもいい。もっとステップアップしたいっていう向上心があれば東京でも大阪でも出ればいいんですけど、まずファーストタッチは地元で十分できますよ、と。

 

竹山 dd(編集部注:deer deepの略)には9歳の子役から60歳オーバーの年配者もいる。みんなお芝居が好きなんです。もしddがなかったら、彼女たちはお芝居に触れることさえできなかったかもしれません。

 

中島 そういう意味では、ddを作って本当に良かったなと思っています。

竹山 新しいメンバーも去年あたりからどんどん増えているんですよ。中学生の男の子も来てくれたりで、脚本を書く立場からするとバリエーションが増えてとても助かります。

 

中島 やっぱりお芝居って新しい風が絶対に必要なんですよ。同じメンバーばかりでやってるとどうしても新鮮味に欠けるし、何よりマンネリに陥る。そこに新しい人が一人でも入ると、先輩として「ちゃんとしとかなアカンな」って背筋が伸びる。

 

竹山 ちょっとかっこいい言い方をすれば「化学反応」が起きるんですよ、新しい人が入ると。今までとは全然違う顔を見せてくれるときがあるんです。

 

中島 だから、今はすごく充実してますね。メンバーもみんな頑張ってくれてるし、新しいアイデアもどんどん出し合って。

コロナ禍で演劇集団deer deepにできること

──そんなddにも”新型コロナ”という強敵が現れました。

 

中島 これは本当に参りましたね。結局、2020年は自前の公演や出演のオファーを受けていたものがすべて中止や延期になりました。

 

竹山 明確な目標を持って頑張ってたのに、それができないとなると落ち込みますよね。

 

中島 そんなときでもddとして演劇の灯は消せない、と思ってます。やっぱり「甲賀市から芝居で滋賀県を盛り上げる」と言ってる以上は何かやらなきゃいけない。そこで、竹山やメンバーともいろいろ相談しました。

 

竹山 メンバーからもいろいろ意見を出してもらったりして。何とかできることはないか? と常に模索しています。

 

──では、2021年のddの主な活動というのはお決まりですか?

 

中島 はい、まず有観客公演は今のところ考えていません。というか、感染拡大防止の観点からやりません。はっきり言って苦渋の決断です。メンバーのモチベーションにも関わりますし。ただ、有観客での公演をやる代わりに「無観客公演の動画配信」を予定しています。内容はまだこれから竹山やメンバーと詰めていきますが、会場を借りてセットを組んだりするのは有観客と全く同じです。そこでお芝居を収録し、私と竹山主導の下でメンバーが編集して、YouTubeの「演劇集団deer deep」チャンネルで配信します。

 

竹山 SNSでも告知させていただきますね。

 

中島 それに加えて、今年は”チーム制”を試してみたいと考えています。数人のチームを複数編成して、各々が芝居を作る。もちろん脚本や演出も自分たちでやってみる。そうすることでお芝居というものの「深み」を体感してもらうことができると思います。

 

竹山 特に脚本は書くほうの苦労を分かってほしい。(笑)

 

中島 もちろん私たちもお手伝いはしますし、この新型コロナ禍だからこそできる挑戦だとも思ってますね。

 

竹山 逆にチャンスでもあると思うんですよ。これまで気づかなかった”才能”に気づくことができるかもしれない。今までやったことなかったけど脚本ってこんなに楽しいんだ! みたいな。いい方向に転がれば、ddにとってもすごくプラスになると思うんです。

 

中島 他にも、ddのPR動画を作ったりしていろいろいチャレンジしようかなと思ってます、2021年は。

 

──新しい挑戦、期待しています。では、最後にメッセージをお願いします。

 

中島 とにかく演劇で滋賀県をもっともっと盛り上げていきたいですね。お芝居のパワーは半端じゃないので、たくさんの人たちを元気づけることができます。今年はお客さまと直接触れ合う機会がほとんどありませんが、動画配信を通して甲賀市民に元気になってもらえれば嬉しいです。これからも演劇集団deer deepをよろしくお願いします。

 

 

劇団のマスコットガール? のどかちゃんと

 

 

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*1 「mixi」は2010年頃に隆盛を誇ったSNS。現在SNS自体は縮小傾向だがXFLAGブランドの「モンスターストライク」などゲーム事業は好調を維持している。

 

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